01-14;小児外科 消化器
- 緑便は、ビリルビンが酸化されて緑色のビリベルジンになって生じる。
腹痛
- 腹痛はまず顔色を見て、歩行時の姿勢を見て程度を測る。吐き気、冷や汗を伴うか確認。下痢症状があればやや安心(少なくとも腸閉塞の可能性は下がる)。疝痛(周期的に強く痛む)であれば消化管など管を動かす蠕動に伴う痛みを考える。炎症性の痛みは持続痛で典型的には虫垂炎などがある。
- 生理学的に、大腸運動は起床後30〜60分でピークに達する。登校時間が迫ってくるとお腹が痛むのは生理的反応と考え、学校を嫌がるのではない。
見逃さないように鑑別する疾患
腸重積症
鼠径ヘルニア
急性虫垂炎(嘔吐や下痢を伴う例もある)
血管性紫斑病(3〜7歳に好発;01−06参照。約10%は腹痛が初発症状)
睾丸捻転
便秘
- 母乳だけの赤ちゃんだと、母乳は吸収されやすく、食物残渣が少ないので便が少しずつしか作られず、数日便通がないこともある。ミルクの場合でも、飲む量が少ないと便はなかなか作られない。(1)
- 低月齢の頃なら「の」の字を書くようにお腹をマッサージしたり、オリーブオイルに浸した綿棒で、先端を1cmほど肛門の中にいれて刺激する方法なども効果がある。
- 離乳食の時間、生活リズムなども整えることが大切である。
- 4〜5ヶ月の頃は便の回数が少なくなる時期。母乳は消化吸収が良いので1週間ほど便が出ないことも。便秘が癖になるのは、離乳食期に便が硬くなり痛くなって、本人が出そうとしなくなることが主な原因。
- 胆汁色素が酸化すると緑色になる。
- 壁で力む;排便しないようにがんばっている状態(人は立ったままの排便は不可能である)
- 便秘や遺糞症の症例では野菜嫌いの偏食で牛乳多飲の場合が多い。野菜嫌いなので野菜ジュースを、便がでないので牛乳をは間違った食生活である。牛乳の飲みすぎはうんちが硬くなり便秘が悪化する。
- 野菜サラダではなく、さつまいも、かぼちゃ、にんじん、枝豆、納豆、そら豆、とうもろこし、海苔などが良い。おやつには、あずき(あんこ)、焼き芋、寒天、りんご、バナナを勧める。便が硬くなる牛乳は少なくして、無糖のヨーグルトに変更する。ジュース、アイス、甘いヨーグルトは極力控えて、果物を食べるようにする。麺類が好きな場合はそば、スパゲッティもお勧めである。
- 子供によっては、食物繊維の多い食事にしてからの2週間はうんちの量が急に増加し、お腹がはって食欲が低下し、便秘が一時的に悪化することもある。その時は、浣腸や便秘用の座薬で早めにたまったうんちを出す。
乳児の便秘
- 水分補給には100%果汁(みかん、プルーン)を使用。糖分やペクチンの働きが便を軟らかくする。2倍に薄めて1日30〜50mLを目安に飲ませる。
- 離乳食の進み方に合わせて、イモ類(サトイモ、長芋など)、納豆、きな粉、海藻類(わかめ、ひじき、のり、寒天など)、野菜(とうもろこし、ごぼう、おくら、モロヘイヤなど)、コンニャク類、キノコ類、ヨーグルト、果物などを試します。9ヶ月以降には、バター、サラダ油などの脂質も有効です。
- カボチャ、さつまいもなどは腸内で発酵するとガスが腸を刺激するので少量に。
病気
- 甲状腺機能低下症;排泄の自立前から便秘、腹満、徐脈、発育不良など
治療
- 乳児期前半;綿棒刺激、マッサージ以外に100%果汁、砂糖水、マルツエキス
- 離乳期;野菜(ホウレンソウ、小松菜、かぼちゃ、さつまいもなど)の裏ごし。ヨーグルト、100%果汁、運動療法(よく遊ばせる)
- 幼児期;水分や繊維の量に注意。起床時に冷たい水や牛乳(寒冷刺激、胃大腸反射)、3歳ごろでの排便訓練(坐るのは10分程度まで)、朝食後の排便習慣
綿棒浣腸
- ワセリンをつけた綿棒で肛門刺激をする。目安としては3日間排便がない時。1cmと2cmにマジックで線を描いておくと便利。入れ方が浅いと肛門刺激にならず、深すぎると粘膜を傷つけることが。1番目の線が見えなくなり、2番目の線が見えるところで大きく「の」の字を書く。
薬物療法
- 直腸内と上部の糞塊を除去することが第一歩である。直腸内を空にして、直腸壁の進展刺激に対する感受性と直腸収縮能を高める。
- 学童期は緩下剤は金曜日の夕食後に少し多めに内服し、休日である土日曜日に自宅で排便させる。
- テレミンソフト座薬;挿肛すると20〜40分後にあまり痛みを感じず排便できる。朝食前に挿肛し、朝食後3〜5分間トイレに座らせる。
嘔吐
- 胃液中の電解質濃度はNa60mEq/L,K10mEq/L,Cl85mEq/LとCl濃度が高く、胃液を大量に吐くことにより、血清Cl値は低下し、代謝性のにHCO3の増加を招く。さらに腎でのH再吸収促進によりKが尿中に排泄されるので、低Cl、低K性の代謝性アルカローシスを招く。
下痢
- 下痢時の水分補給は電解質飲料、水、麦茶、味噌汁。
- たんぱく質は、白身魚や豆腐、鶏のささみなど脂肪の少ないものにする。
疾患
ヒルシュスプリング病
- 浣腸すると悪臭のある軟便が多量に。痩せて腹部が張ってくる。
- 軽症例では難治性下痢と診断されて、成人になるまで発見されない場合もある。新生児期でなく乳幼児発症例は慢性便秘が主症状。
- Down症での発症率は約2〜15%(一般人では0.15%)。
- 低出生体重児に多いということはない。
- S状結腸〜直腸にかけて、Auerbach神経叢やMeissner神経叢が欠如している。(大腸全部や小腸尾側にまで及ぶ場合もある)
- 適切な排便管理をしないと壊死性腸炎を来すことがある。
- 直腸肛門反射が陰性では、甲状腺機能低下症もそうなることがあるので鑑別になる。
先天性肥厚性幽門狭窄症
- 男女比は4:1で男児に多い。
- Ramstedt手術
腸重積
- 発症後24時間以内の場合、注腸、高圧浣腸により整復できる可能性は90〜95%。(発症から時間が経過すると腸管が壊死に陥っている可能性があるので禁忌)
- target sign, psudokidny sign
- 4,5ヶ月〜2歳までの乳幼児
- アレルギー性紫斑病に合併することがある。
鼠径ヘルニア
- 約10%が嵌頓し、1%が絞扼(虚血)を伴う。嵌頓例は1歳未満、特に生後6ヵ月以下に多い。嵌頓の場合90%は用手還納が可能。
- 絞扼を考える場合;1)腸閉塞(胆汁性嘔吐、腹部膨満)。2)経過が24時間以上。3)局所所見が強くて硬く、発赤を伴い痛がる場合。
- ほとんどは外鼠径ヘルニア
- 両側性は10〜30%。
参照
(1)日本医事新報 91-92 2006.7.29 No.4292